先日RL Commercial REIT (RCR) のIPO募集がありました。僕は申し込むとか言っておきながら、やっぱりポートフォリオの保有銘柄を増やしたくないのと、集中と選択の観点から応募を見送りました。奇しくもPLDTの連騰があり、ポートフォリオの整理としてPLDTを全て売却しました。RCRに投入しようかなとも思いましたが、結局は別の銘柄の買い増しに当てました。ということでRCRは見送りしました。
そんなこんなでRL Commercial REITが上場する記念に、その親会社であるJG Summit Holdings, Inc.について、あれこれざっとですが調べてみたいと思います。と言ってもフィリピンの中でも最大級と言えるコングロマリットですから、改めて僕があれこれ新しいことを言うことはないかもしれません。
JG Summit Holdings, IncはJohn Robinson Lim Gokongwei (ジョン・ロビンソン・ゴコンウェイ)によって設立された持ち株会社です。名前からも分かるように中国系フィリピン人で、父親は福建省に先祖を持つセブ島出身者で、比較的に裕福な家系に生まれました。第二次世界大戦後、ゴコンウェイはAmasia Tradingを立ち上げ、アメリカから小麦粉や生鮮食品、古着や雑誌などを輸入していました。1957年に貿易は利益率が低く、また政治に左右されると考え、ゴコンウェイはユニバーサルコーンプロダクツという製粉工場を設立します。これが現在のユニバーサルロビーナになります。ただちょっとこの点は精査が必要です。というのも、ユニバーサルロビーナ側は1954年と説明していますが、JG Summit側は1957年と説明しているからでう。とりあえず親会社の説を採用しました。そんなこんなで1961年にはConsolidated Food Corporationを立ち上げ、インスタントコーヒーなどを発売しました。1990年11月にゴコンウェイはJG Summit Holdingsを上場持株会社として設立します。JGは本名のJohn Gokongweiの頭文字を取っています。その6年後の1996年には皆さまお馴染みのセブ・パシフィック航空が運航を開始します。ゴコンウェイの覇道は留まることを知らず、JG Summit Holdingsは以下の会社を保有するまでになりました。
※PLDTやメラルコは完全子会社ではありませんが、筆頭株主と言えるのでリストに載せています。
ざっと見て一番日本人に馴染みが深いのはセブパシフィック航空でしょうか。あとはフィリピンに住んでいる限りあまり出会う機会がないかもしれませんが、ユニバーサルロビーナは日本の日清やカルビーとも提携しています。
そんなこんなでフィリピン財閥系でも比較的バケモノに分類されるJG Summit Holdingsですが、このコロナ禍でもそのバケモノさは異色を表しています。
本年度四半期 | 前年度四半期 | 本年度初来 | 昨年同期 | |
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総収入 | 60,506,439 | 49,166,741 | 128,144,120 | 117,808,710 |
総支出 | 55,729,993 | 49,617,406 | 120,312,856 | 109,154,815 |
営業外利益 | 434,502 | 2,145,650 | 765,094 | 1,158,001 |
営業外損益 | -3,435,945 | -4,100,879 | -5,829,806 | -7,198,829 |
税引き前利益 | 1,775,003 | -2,405,894 | 2,766,552 | 2,613,067 |
税金等 | 959,487 | 673,691 | 1,424,518 | 1,704,238 |
税引き後純利益 | 815,516 | -3,079,585 | 1,342,034 | 908,829 |
注目したいのは四半期の利益です。前年度はコロナ真っ最中で、どの企業も新しい事業スタイルの模索の年でした。したがってJG Summit Holdingsも例外なく赤字を叩き出しました。本年度はワクチンの供給などもあり、希望の持てる年になりつつあるのは確かなのかもしれませんが、前年度の赤字から反転しすぎじゃないかってくらい反転しています。
そんなJG Summit Holdingsの株価は比較的良心的なお値段です。
現在のところ1株あたり60ペソ前後で買えます。2021年の配当実績 (0.38ペソ)に基づくと配当利回りは0.6%と少し寂しい気もします。なお昨年は1株あたり5%の普通株式を配当として配っています。分割ではなく、こういう配当があるのもフィリピン株の魅力の1つかもしれません。
JG Summit Holdings傘下のRL Commercial REITが上場するわけですが、名実ともにフィリピン史上最大のREITの上場になります。恐らく買っておいて損はないREITだとは思いますが、一方で個人的にはちょっと食いつきたくないというか、フィリピンの人口増を見込めばREITは全然ありなスタイルだとは思いますが、一方で修繕などの問題がこれから山積してくるはずなので、そのあたりをどう乗り越えるつもりなのかが不透明なので乗り気になれません。さらに最近のフィリピンはREITのIPOラッシュが続いており、個人的には食傷気味な感じも否めません。これからJollibeeとDouble DragonのREITなどまだまだREIT IPOが続きますしね。 しかし今はアフターコロナを見据えた事業所や住宅の賃貸需要が増加する前のチャンスと言えばチャンスなわけで、これからフィリピン株に挑戦する人はREITも視野に入れておくのはアリなのかもしれません。