株に投資している人であれば「格付け」に振り回された人も少なくないんじゃないでしょうか。投資していた銘柄の格付けが、突然「価格XX円 ネガティブ」と評価されて暴落したという経験は誰しもが通る道だと思います。逆にポジティブになっても買いが入らなかったりして「格付けって何なの?」と思う人も少なからずいるんじゃないでしょうか。ご多分に漏れず、僕もその一人です。なおサブプライムローン・ショックは格付けによって引き起こされたとも言われているほど、格付けは投資に関して極めて強い影響力を持っています。
意外なことかもしれかせんが、日本で信用格付業者として金融庁に登録されているのは8社しかありません(2021/09)。その登録企業の第一号として日本格付研究所は知られています。主な事業は言うまでもなく格付を行うことで、金融庁に登録されていない企業が証券や債権、あるいは国や企業の格付を行うことはできません。
つまり、金融庁のお墨付きの信用格付業者の信用格付けは、それなりの影響力を持つということです。
日本格付研究所は9月6日にフィリピンの信用格付けを据え置きの”-A”、見通しは安定的としました。この信用格付けは、タイ、ハンガリー、ペルー、メキシコと並びます。なおメキシコに関しては見通しをネガティブにしています。そしてインドやインドネシア、ロシアやブラジル、ルーマニアなどよりも上に位置づけられています。
国に対する信用格付けが意味するところは、例えば国債の発行時に、デフォルトの蓋然性が低ければ利率が低くても資金が流入しやすくなるというメリットがあります。今回、コロナ禍でもフィリピンに対する信用格付けが据え置かれたのは意味が大きく、フィリピンを主体とする、あるいは国際株式に投資するファンドにとって投資しやすい状況が敷かれたと言えます。言い換えれば、今後の株価の上昇を見込むことができるというわけです。
もちろん”AAA”のような国に比べれば信用度は低いと言えるわけですが、逆に言えばAAAはデフォルトのリスクが極めて低いので、例えば国債など利息が低くても売れる=利益が少ないというローリスク・ローリターンと言えるでしょう。そういう意味で”AAA”の信用格付けの国に投資するのは安定的とは言えますが、利が乗りにくいとも言えるでしょう。したがってフィリピンのような”-A”くらいが、適度なリスクを取りつつもそれなりのリターンを見込めるというわけで、個人的には好みの範囲です。
なおフィリピンに対する信用格付けが”-A”と据え置かれた理由として日本格付研究所は
堅調な内需を背景にした高水準かつ持続的な経済成長パフォーマンス、GDP 対比で低水準に抑制された対外債務や外貨準備の蓄積等にみられる対外ショックに対する耐性、堅固な財政基盤、健全な金融部門などを評価
https://www.jcr.co.jp/download/bb616c7edbd9d4b61199616416b6ff6d61f166aefeea6ef799/21i0038j.pdf
と述べています。
それぞれの企業のディスクロージャーを確認するのは最も基本的なことですが、このような広い目線も持って投資することも大切だと思います。それほど長いレポートではありませんが、極めて端的にフィリピンの状況が良くまとめられており、必要な情報量を十分に持っているので、フィリピン株に投資を考えている人には是非とも目を通してもらいたいと思っています。