株式投資で配当と言えば配当金が最も一般的だと思います。しかし法律的には別に金銭での配当でなくてもいいわけなんです。ちょいと小難しい話になりますが、日本の会社法454条1項及び4項1号などに基づけば、法的には配当財産として現物を認めています。注意しなくてはならないのは「株式での配当」を認めていない点です。というのも、それならば「募集株式の発行等」で株主割当てを行えばいいわけですからね。
会社法454条1項 配当財産の種類(当該株式会社の株式等を除く。)及び帳簿価額の総額
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=417AC0000000086
会社法454条4項1号 株主に対して金銭分配請求権(当該配当財産に代えて金銭を交付することを株式会社に対して請求する権利をいう。以下この章において同じ。)を与えるときは、その旨及び金銭分配請求権を行使することができる期間
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=417AC0000000086
まず454条1項を純粋に読めば「当該株式会社の株式等を除く」と添えられていますから、株式以外での財産の配当を認めています。そして4項1号の「金銭分配請求権」は、配当財産が金銭以外の財産である時に、その配当財産ではなく金銭で交付しろということを請求できるということです。つまり日本の会社法では当該株式会社の株式以外での現物配当が認められると読めるわけですね。
一方でフィリピンでは株式配当がなされることがあります。直近での株式配当はMakati Finance Corporationが行いました。株式分割と何が違うんだっていうところが少し面倒な説明になるわけですが、株式分割の場合は1株あたりの株価が調整されますが株式配当の場合は価格調整がなされません。価格が調整されたら配当の意味を成しませんから当然と言えば当然かもしれません。日本だと「株主割当」に該当すると考えてもらったらいいのかもしれません。
なんかごちゃごちゃと難しい話をしましたが、フィリピンでは最近ユニークな配当が行われます。
小麦関連製品を行っているLiberty Flour Mills (リバティ・フラワー・ミルズ)は普通株式1株に対してLFM Properties Corpotationの株式69株で配当を行います。LFM Properties Corporationはリバティ・フラワー・ミルズの100%子会社で、名前が示すように不動産を扱っています。ちなみに「行います」「行われます」と回りくどい言い方をしていますが、ここから先が興味深いところでして、リバティ・フラワー・ミルズはLFM Properties Corporationの株式を2021年の第2四半期までに発行し、上場申請を2021年の第3四半期までに行う計画でいます(詳しくはディスクロージャーを読んでください)。
言い方を変えれば、リバティ・フラワー・ミルズの株主はIPOを経ることなくLFM Properties Corporationの株式を取得するという配当なわけですね。また観点を変えればLFM Properties Corporationは上場予定であるという、ちょっとしたリークなわけです。ただ上場申請を行うと述べているだけで、それが承認されるかは別の話ですが。これで申請が通らなかったらどうなるんでしょうね?株式の発行は可能だとは思いますから、恐らくこのまま発行される流れにはなると思います。しかしそれで上場申請が拒否されたら、市場で売買できない株式をもらうことになるわけですよね?…正直かなり困ると思うんですけど(笑)ただリバティ・フラワー・ミルズは配当日が決定した時点で情報開示を行うと述べているので、まだどうなるのか分かりません。
恐らく、この手のタイプの配当は日本で行われないとは思います。ある意味でフィリピン株の楽しみの1つかもしれませんね。仮にですよ、LFM Properties Corporationの上場申請が通ってIPOバブルを引き起こしたら、もうそれこそ大勝利と言えるんじゃないでしょうか?
どうなるのか不分明なところばかりですが、フィリピン株にはこういう配当もあるということを知っておいてもらえたら、戦略の幅も少しは広がるのではないでしょうか?
フィリピン企業のホームページって、とても洗練されたオシャレなものがある一方で、リバティ・フラワー・ミルズなど、どこか懐かしさを覚えさせるホームページがあるのって面白いと思っています。株主としては逆に不安になるクオリティなのかもしれませんが(笑)