Globeと言えばPLDT傘下のSmartと共にフィリピン国内の電気通信事業を担う二大巨頭の1つですが、Globeの社長のアーネスト・クー氏は主力の電気通信事業から5年から10年かけてデジタルソリューションプラットフォームとなるためにシフトしていくと述べました(Globe Doubles Down on Becoming a Digital Solutions Platform)。
簡単に言えば通信事業からGoogleやGrab、あるいはAmazonのようなプラットフォーム企業を目指すということですね。日本企業にはプラットフォーム企業がない、正確に言えば存在はするのですがほぼ勝ち目がない状態になっています。今の生活を振り返れば、Googleで検索し、YoutubeやNetflixで映画やビデオを見て、Amazonで買い物をし、TwitterやInstagram、あるいはFacebookのようなソーシャルメディアを楽しんでいます。またスマホはAndroidかAppleかの二択状態です。これらのサービスを提供する企業を総称してGAFAMと呼んだりするわけですが、ざっくばらんに言って様々な企業や個人が参加する場を提供するインターネットサービスのことをプラットフォームビジネスと呼びます。例えばAmazonなんかが分かりやすくて、Amazonマーケットプレイスという場を準備して、そこで企業や個人が物品の売買を行います。その売買に際して手数料を取るというのが基本的なプラットフォームビジネスです。その場に人や企業が増えていけば、そのプラットフォーム無しには生活が考えられなくなってきますから、ある意味で人や企業の生殺与奪権を握ることができるビジネスとも言えるかもしれません。かく言う僕も本業に関連して電子書籍をAmazonで販売していますから、Amazonがある日に電子書籍事業を止めますと言ったら、僕の毎月のお小遣いがなくなってしまうわけです。僕のような副業くらいならいいのですが、これが本業となっていれば、まさに生殺与奪権がAmazonに奪われている状況と言えます。逆に言えば、Amazonはある程度やりたい放題ができる状態にあるとも言えます。
さてGlobeは既に電子決済市場で大きな存在となっているGCashを抱えています。公共料金の支払いから街での買い物など広く行き渡っており、既に電子決済ではプラットフォームサービスを構築したと言えるでしょう。なお同市場を二分する会社にPayMayaがあります。今後これらの2つの会社と凌ぎを削り合う企業が出てくるのは難しいような状況になっています。というのも、GlobeはAlibabaから支援を受けており、PayMayaはTencentから支援を受けているという、ある意味で中国企業の代理戦争のような状況になっているからです。そこに大きな企業の支援がない企業が入るのは困難と言わざるを得ないでしょう。そういう意味で、既にGlobeは大きなアドバンテージを持っていると言えるでしょう。
GlobeとしてはGCashのプラットフォームを広げれば今後は多方面にてプラットフォームサービスの展開が可能な状況にあると言えます。Globeが新しく事業を始める際には917Venturesという会社を使うのですが、遠隔医療サービスプラットフォームのKonsultaMDやショッピングプラットフォームのPureGoなどがあります。GCashも917Venturesのポートフォリオですし、917Venturesは大きな実績と技術力を持っています。
今回のGlobeのニュースは、このようなプラットフォームサービスに徐々に移行していくということで、既に通信事業者として多くのユーザーを抱えているGlobeにとっては勝つことしか見えない道なのかもしれません。