ウクライナ問題からロシアへの経済制裁など国際情勢は誠に混沌としています。ワクチン接種をしてコロナ禍を生き抜いてきたにも関わらず争いを始めるというのは聊か人の愚かさに尽きるのかもしれません。
そうは生き抜いていかねばならぬわけで、投資も戦略を練って計画的に行わなくてはなりません。もちろん休むも相場と言いますから、ウクライナ問題が落ち着くまでは現金で保有しておくというのも一つの手なのかもしれません。ただロシアの原油や天然ガスなど世界第二位・第三位を争う規模の産出国との取引を控えるという経済制裁は将に諸刃の剣で、輸送コストや化学製品の高騰などで経済の冷え込みは想像以上に長くなると踏んでいます。代替エネルギーにシフトするとなると今度はレアアースの問題などが出てきます。さらに金(Gold)は工業製品には必須の金属で、その価格はうなぎ登りのように上昇しています。
ということで鉱業関係に注目しておくのは一つの戦略ではないかと思っています。あまり知られていませんが、フィリピンは世界で5番目に鉱物資源が豊富な国であり、金の埋蔵量 (≠産出量)は3位、銅は4位、ニッケルは5位、クロム鉄鉱は6位となっています。さらに非金属鉱物では約24億トンと推定される未開発の石炭資源を有しています。金の産出量で言えば中国が断トツで一位、そしてオーストラリアやロシアが含まれます。ますます純金の値段が上がるのは火を見るよりも明らかですね。またクロム鉄鉱は耐食性に優れるクロームメッキ、そして私たちの生活に必需品となっているステンレス鋼を作るのに必須です。ロシアの資源が使えないとなると必然的に世界中の鉱業に注目が集まるわけで、フィリピンの鉱物資源系の会社は意外に今後の需要を考えると一興かもしれません。
フィリピン株で鉱業系の会社は意外にも多いです。
Symbol | Name |
---|---|
AB | Atok-Big Wedge Company, Inc. |
APX | Apex Mining Company, Inc. |
AR | Abra Mining and Industrial Corp. |
AT | Atlas Cons. Mining and Dev’t Corp. |
BSC | Basic Energy Corporation |
COAL | Coal Asia Holdings, Inc. |
CPM | Century Peak Holdings Corporation |
DIZ | Dizon Copper Silver Mines, Inc. |
GEO | GEOGRACE Resources Philippines, Inc. |
NI | NiHAO Minerals Resources Int’l, Inc. |
NIKL | Nickel Asia Corporation |
OM | Omico Corporation |
ORE | Oriental Peninsula Resources Group, Inc. |
OV | The Philodrill Corporation |
PERC | Petroenergy Resources Corporation |
PX | Philex Mining Corporation |
PXP | PXP Energy Corporation |
SCC | Semirara Mining and Power Corporation |
UPM | United Paragon Mining Corporation |
ということで、いくつか紹介してみたいと思います。
いきなり石炭で申し訳ないのですが、フィリピン最大の石炭生産会社であり、フィリピンで唯一石炭を自社で採掘している電力会社です。この脱炭素の時代にと思われるかもしれませんが、まず太陽光などの代替可能エネルギーは天候に左右されるため大型の蓄電池などがない限り補助的なものとならざるを得ません。フィリピンには原子力発電所はありませんし、ウクライナの状況をみると今後の原子力発電にも冷や水が掛かった状態だと言えるでしょう。一方で石油などロシアから輸入が厳しくなる状況では石炭に再注目が集まる可能性があります。なお米国エネルギー情報局(EIA)は2021年の石炭火力による発電量が前年比で22%増と報告しています。天然ガスなどの価格も高騰する中で注目されるチャンスがあるでしょう。
ニッケルの産出国はフィリピンは世界第二位にランクインしています。一位はインドネシアなのですが2020年から国内でのニッケル精錬とバッテリー産業の推進のためにインドネシアはニッケル鉱石の輸出を禁止しています。そうなると必然的にフィリピンが世界一位に躍り出るわけです。さらにロシアからの供給が止まったことを受けてニッケルが暴騰しています。このような観点から見てNickel Asiaは今後が楽しみな銘柄の1つと言えるでしょう。
Philex Mining Corporationは傘下に金の採掘などを行うPhilex Gold Philippines, Incを抱えています。銅と金を産出するPadcal鉱山を運営しており、2020年に行われた調査ではまだまだ採掘の余地が十分にあることが確認されています。ロシアは世界第三位の金の産出国であり、その供給が止まればスマホやパソコンなどの精密機器の製造に大きな影響が出てきます。基盤には電気抵抗率の一番低い金が使われていますから、ロシアから供給できなくなると必然的に価格が暴騰します。フィリピンは埋蔵量では世界第三位にありますから、伸びしろがとても大きいことが分かります。そういう意味でPhilex Mining Corp.も今後の飛躍が見込めるかもしれません。
ウクライナ問題から経済の停滞が予測できます。塩漬けにするもよし、全て現金化してチャンスの到来を待つもよし、今後の需要と供給の観点から鉱業系に投資するのも面白いのではないかと思います。