なかなか世界的に投資環境が渋い状況ですが、如何お過ごしでしょうか?この渋い状態をチャンスと見て買い増すか、あるいは一旦ノーポジで様子を見るのか、あるいは売買を行わず塩漬けにするのか、その結果の良し悪しは誰にも分かりません。僕はチマチマと買い集める作戦を続けています。果たしてこれが吉と出るのか凶と出るのか。
ということで、今日は参考になるか分かりませんがフィリピン政府が保有する株式について少し触れておきたいと思います。ただもちろんフィリピン政府そのものが株を保有するのは資本主義的に色々と問題なので、政府機関というのが正確な表現かもしれません。
フィリピン株を保有する政府機関は以下の4つがあります。
SOCIAL SECURITY SYSTEM、通称SSSは総合的な社会保障制度で、フィリピンで一人以上を雇用する事業所、自営業の場合は月収1千ペソを超える場合は強制加入となっています。その保証範囲は年金から障害、傷病や出産手当、労災まで幅広いのですが、保険料の国庫負担がないという所がポイントです。つまり政府の制度ではありますが国民が自ら負担して自ら保障するというものですね。雇用者は8%、被雇用者は4%を負担します。自営業だと12%を負担しなければなりません。とあるオンライン英会話スクールの講師はほとんどが個人事業主なので日本企業側はSSSを負担していないなんてケースもあります。さてさてSSSは1995年には一応名目的には皆年金制度となりましたが、OFWs、いわゆるフィリピン人海外労働者と専業主婦などは任意加入となっています。SSSを補完する基金としてSSS PROVIDENT FUNDというものがあります。月収2万ペソを超えると自動的にプログラムの対象となります。誤解を恐れずに言えば、平均月給以上を稼ぐ人たちには通常の年金などに加えて保障を厚くしますよ的なものです。安心安全の元本保証らしいですけど株式投資を行っているので誇張な雰囲気がしないでもないですね。そしてSSSが民間向けの社会保障制度ならGOVERNMENT SERVICE INSURANCE SYSTEMは公務員向けの社会保障システムです。LAND BANK OF THE PHILIPPINESは国有銀行で主に農民や漁師のためにサービスを行っています。ざっくりと言えば日本のJAバンクがそれに該当するかもしれません。
ということで、ざっくりと言えば、公民向けの社会保障制度機関と銀行が株式投資を行っているということが言えます。気になるのがどこにどれだけ政府機関が株式投資を行っているのか?ですね。
実はとても簡単でPSE Edgeに普通に公開されています。たまに上場企業が株主リストを公開していますが、それを見るとすぐに分かります。ここではAREITの上位100人の株主リストを例に見てみましょう。注目するところは「OUTSTANDING BALANCES FOR A SPECIFIC COMPANY」のリストです。企業によって名称が異なりますので適宜に見てください。ずらずらーっと色々な企業の名前がありますが、その中に上述の機関の名前を見つけることができます。つまりフィリピン政府はAREITに投資していますよってことが分かります。
もちろん投資していなければこれらの名前をリストの中に見つけることはできません。AREITの場合は4つの政府機関が投資していることが確認できるわけです。
ということでREITに限定してフィリピン政府がどれだけ投資しているのかを表にしてみました。
AREIT | VREIT | MREIT | DDMPR | FILRT | RCR | |
SSS PROVIDENT FUND | 3,703,700 | 14,623,000 | 0 | 22,222,000 | 3,571,400 | 806,900 |
SOCIAL SECURITY SYSTEM | 3,758,900 | 119,098,000 | 0 | 87,536,000 | 17,653,900 | 20,968,400 |
GOVERNMENT SERVICE INSURANCE SYSTEM | 1,112,300 | 57,142,000 | 12,740,000 | 222,222,000 | 71,428,500 | 77,519,300 |
LAND BANK OF THE PHILIPPINES-TRUST BANKING GROUP | 111,000 | 0 | 642,900 | 0 | 1,475,800 | 2,493,900 |
このように見ると、例えばPOGOsの問題で仮に政府が本格的に締め出しを行ったとしたら、POGOsが大きな利益を占めるDDMPRに投資しているSSSやGSISなどはダメージが大きいはずなんですね。それを看過して本当に政府は締め出しを行えるのか。このように多角的に問題を捉えるというのは大切なことかもしれません。
また定期的に株主リストは公開されていますので、政府の株式数の保有動向から、政府がどのような先見を持っているのかという判断の一つにも出来るかもしれませんね。