Converge ICT Solutions Inc. (ティッカー:CNVRG)はフィリピンの電気通信(テレコミュニケーション)サービスを提供する会社です。フィリピン国内ではAir Cable (ケーブルテレビ)、Air Internet (ケーブルインターネット)を運営しています。2021年には家庭用の光ファイバー市場の54%を占めています。
2020年にPSEに上場したばかりですが、2009年より電気通信事業の許可を得ている会社です。またICT(情報通信技術)を利用できる人と利用できない人との格差、いわゆるデジタル・ディバイドを解消する方法の1つとして衛星インターネット事業にも参画することを仄めかしています。衛星インターネットの利点は電話線を引けない地域、電波塔を建てられない場所など地理的な条件をほぼクリアできる点ですね。僕はツバルに行った時に利用したことがあります。
競合企業として同じインターネット事業を展開するPLDTやGlobeなどがあります。
現在1株あたり22.7ペソ(6/16終値)で、上場日の14.78ペソから右肩上がりを続けています。これはコロナウイルスの蔓延によってテレワークなどの需要が増えたことに要因があると考えられていますが、国際的な目線から言えばフィリピン国内のインターネット事業よりも海底ケーブル事業で存在を示しているからだと個人的には考えています。
6月4日のConvergeに関するニュースに次のようなものがありました(Developing Telecomsより抄訳)
PLDT傘下のDigital Telecommunications Philippines (Digitel)の子会社で、海底ケーブル陸揚げ局などを運営しているDigitel Crossing Inc. (DCI)とAsia Netcom Philippines Corp. (ANPC)の株式を総額358.47万ペソで取得しました。
どうでもいい豆知識ですが、フィリピンと米国をつなぐ初めての太平洋横断ケーブルの分界点、つまりケーブルの維持管理に関する責任範囲を分ける場所は日本の父島でした。
本題に戻りますが、Convergeは海底ケーブルの保守運営を担うことができるわけですが、海底ケーブルは現代のICTの要でもあるわけですから事業的には安定したものとなるでしょう。
6月15日のRapplerによれば、Converge ICT Solutions Inc.はビサヤとミンダナオでの事業拡大に向けて、セブのマンダウエ(セブ市の東北、マクタンに行く時に通る市ですね)に10億ペソ規模のデータセンターを建設する予定です。さらにファイバーバックボーンネットワークをセブの15都市で展開するとも述べています。またビサヤ諸島とミンダナオを結ぶ海底ケーブルに60億ペソを投資しています。
Convergeは光ファイバーインターネットプロバイダーとしてよりも海底ケーブル事業に注目すべき企業だと思っています。PLDTなどが5Gの普及を進めているのは有線よりも新規に導入するコストやメンテナンスの面から言って有利だからと考えられます。日本のように既存の電話回線が行き届いている国では光ファイバー化などの導入が比較的安価ですが、フィリピンのような既存の電話回線が行き届いていない国では新規に光ファイバーを引くのはコストが高く付きます。
無線で国内ネットワークを結んだ良い例がブータンです。新規に電話回線を敷設するのはコストがかかり、また電話回線のメンテナンスも容易ではありません。そこで比較的安価で済む電波塔を建てて国内ネットワークの構築に成功しました。一方で急激にインターネットが普及し、さらにスマホで24/7楽しめるようになったことで西洋文化が流入し、ブータンの独自文化が失われつつあるという危機も耳にします。
フィリピンもまだまだネットワーク環境は良好とは言えません。メンテナンスや新規回線の敷設のコストを考えれば5Gの電波塔を建てた方が安価でメンテナンスも容易ですから、今後は有線ネットワークよりも無線ネットワークの環境構築に支点が移っていくのではないかと思っています。一方で5Gを支えるものはデータセンターと海底ケーブルであるのは疑いようがない事実だと思います。いくら5Gでも太平洋を渡って米国に接続することはできませんし、5Gの膨大な情報量を支えるにはデータセンターは必須です。
このような目線から見た時、Convergeの本領は家庭用ケーブルインターネット事業ではなく海底ケーブルとデータセンターにあると思っています。PLDTとGlobeの寡占状態にメスを入れるよりも違う側面から事業を伸ばした方が得策だとも思いますし。
個人的にはまだまだ過小評価され過ぎな株価ではないかな〜とは思っていますが、投資するなら僕のような素人の判断で投資せず、きちんと下調べして投資するようにしてくださいね。