フィリピン株に投資する時に、たとえば株主構成などをチェックするわけですが、これを見ている面白いんです。会社によってトップ100の株主の名前などを公開しているのですが、たった1株でランク入りできたりするわけです。自分の名前を株主リストに載せて「フィリピンの会社の筆頭株主ですが何か?」的な自慢ができるわけです。
ただ残念ながら現在は会社がそのような方法による公開を行わない限り基本的に株主リストに名前が載ることはありません。各社の株主リストに載っている名前は電子データとして登録される前の株券を紙のままで持っている場合や会社と特に関係がある場合などに限られています。
現在では、例えばAB証券で株を買うと、そのデータはPCD (Philippine Central Depository, フィリピン中央証券保管機構)に電子データとして保管されます。この場合、株主リストに個人名が載ることはなく、次に述べるPCD Nominee Corporationの名義でリストに載ることになります。
株主構成を見ていて最も頻繁に目にする株主がPCD Nominee Corporationという会社です。細かく言えばPCD Nominee Corporation (Filipino)とPCD Nominee Corporation (Non-Filipino)に分かれています。これは上述のPCDの子会社で、電子データとして登録された株券を一括管理する会社です。外国人として株を買うとPCD Nominee Corporation (Non-Filipino)で一括保管されるので株主としてリストに載ることはなく、PCD Nominee Corporation (Non-Filipino)の株数の一部扱いとなるわけです。
したがって、いくらPCD Nominee Corporationが筆頭株主であろうと当然のことながらPCD Nominee Corporationとして株主の権利を発動することはできません。
このPCD Nominee Corporationで管理されている内訳、例えば誰がどのくらいの比率を持っているのかを見ることが出来るのかというと、個人で知ることはほぼ不可能です。実際のデータとして上がってくる、あるいはIR資料として提供される場合は金融機関の内訳くらいしか掲載されません。PCD Nominee Corporationが管理する株式のうちAB証券が何株、COLが何株とか、その程度のことしか知ることができないようになっています。
「フィリピンの何とかって会社の筆頭株主なんだぜ~」と自慢したかった人には残念な話ですが、ある意味で安心になったとも言えます。ある会社は筆頭株主のフルネームと住所を載せていますから個人の特定がばっちり出来ちゃうわけですし、そういうリスクがなくなったのは喜ばしいことでしょう。
なおPCDへの保管は無料です。
ABキャピタル証券で株式を購入すると次のような記載のあるBUY INVOICEを受け取ります。FEESの欄にあるPCDが今回のPCD Nominee Corpotrationのことを指しています。
確かにゼロになっていますよね?ABキャピタル証券で購入した株式は確かにPCD Nomineeに預けられている証拠となります。
PCD Nominee Corporationに関して見るべきはフィリピン人個人投資家が多いのか、それとも外国人個人投資家が多いのかという点だと思っています。外国人個人投資家であれば頻繁に売買を繰り返すとは考え難いので、PCD Nominee Corporation (Non-Filipino)が筆頭である場合は狼狽売りなどが起こりずらいと言えるでしょう。もちろん完全にそうだとは言い切れませんが、フィリピン個人投資家の比率が多ければ、それなりの価格で利確するなど短期売買が多いことが考えられますから、もし株価が急落したときには必要以上に値が下がることがあります。
PCD Nominee Corporationって何ぞやという疑問が解消され、快適なフィリピン株投資ライフの一助になればと思います。