メリーマートは2019年11月にInjap Supermartから社名変更した食料品小売を営む会社で、2020年6月15日にフィリピン株式市場 (PSE)に上場を果たしました。回りくどい書き方をしましたがInjapの名前でビビっときた人は相当フィリピンに入れ込んでいると思います。現在のメリーマートの主要株主を見ると筆頭はInjap Investmentとなっています。この会社はDouble Dragon Propertiesで知られるEdgar Sia氏の会社になります。InjapはEdgar Sia (エドガー・シア) 氏の愛称ですね。
パーソナルインフォメーションなので別に必要のない情報かもしれませんが、Sia氏の父は中国人とフィリピン人のハーフで、母のPacita Jarudaは日本人とフィリピン人のハーフです。タガログ語で中国人のことを”Intsik”といい、それとタガログ語の英語借用語”Japanese”を組み合わせて”Injap”という愛称で呼ばれました。
どうでもいい話ですけど、タガログ語で日本人を指すときは英語のJapaneseで、日本という国を指すときは”Hapon”というスペイン語の借用語を使います。じゃあ何で”Japones”や”Japonesa”を使わないのかと言うと…何でなんでしょうね。民族を指す言葉、たとえばCebuanoやCebuanaなどスペイン語の文法性を取り入れてるのに、JapaneseはJapaneseなんですよね。
話を戻しますが、個人的にメリーマートの事業とDouble DragonのCityMallと、どこかコンフリクトしているような気がしないでもないんですが、CityMallの食料品部門としてメリーマートが入るという認識でいいのか、ちょっと考えあぐねています。
メリーマートのディスクロージャによると、7月12日に薬局チェーンのCarlos Drugs-Lucena Inc. (“Carlos SuperDrug”, カルロススーパードラッグ, カルロスドラッグスルセナ)を買収すると発表しています。カルロススーパードラッグは8月で設立75周年の節目を迎えるケソン市最大のドラッグストアチェーンの老舗です。
今はフィリピンに行けませんからGoogleストリートビューで実際に買収したカルロススーパードラッグの一店舗を見てみましょう。
えー、日本の感覚で言う「ドラッグストアチェーン」とは恐らく予想をいい意味で裏切っている佇まいだとは思います。本当にメリーマートが買収するほどの企業価値がカルロススーパードラッグにあるのでしょうか?
フィリピンのドラッグストア業界の筆頭はMercury Drugです。今ではオンライン販売からドライブスルー、マニラ首都圏であればデリバリーサービスを行っている新しい挑戦と顧客ニーズに答える活気のある会社です。また香港資本かつフィリピン国内ドラッグストア業界第二位のWatsonsはSMと提携してオンライン販売などを行っています。一方でメリーマートが買収したカルロススーパードラッグは町の薬局のような雰囲気に加え、自社ホームページやオンライン販売なども行っていません。
これは僕の全くの想像の範囲を出ませんが、メリーマートはドラッグストアチェーンの買収そのものが目的ではなく、資格を買ったと考えるのが合理的だと思います。JICAがフィリピンの医療規制などの資料をまとめてくれていますが、これを一からクリアする投資をするより既に許可を持っている企業を買収した方が結果的に安くつくなんてことがあります。近年だとGoogleが日本のスタートアップ企業のpringを購入したのは記憶に新しいと思います。これはGoogleが日本で金融事業に参入するに際し、新しく許可や免許を取得するよりも既に許可や免許を持っている企業を買収した方が早いから、という良い例でしょう。時に許可や免許の取得に数ヶ月、何年もかかる場合がありますからね。
メリーマートがそこまで考えているかは未知数です。でもわざわざカルロススーパードラッグを買収するからには理由があると思っています。それが明らかになるのは次のIRを待つほかないでしょうけれども…。
ドラッグストアチェーンの買収に加えてメリーマートの株価の安さ、そして発行済株式数が他社と比べても少ない方ですから、これはもしかしたら、もしかするんじゃないかな〜なんて考えてます。ポジショントークみたいになって嫌な感じですが、僕はまだ買っていません。でもどこかの段階でポートフォリオに加えたいと思っています。Edgar Sia氏のことですから、何かやってくれるんじゃないかな〜という期待を込めて。