Converge ICTやGlobeなどの台頭でPLDTのフィリピンでのプレゼンスが低下することを地味に危惧していました。特に光ファイバーケーブルなどを運営するConverge ICTはPLDTにとって最大のライバルになると思っています。
そんなことを頭が過ぎっていたのですが、PLDTが国際海底ケーブル敷設プロジェクトAPRICOTに参加するというニュースを発表しました。これは個人的にかなり大きなニュースなので、ちょっと取り上げてみたいと思います。
APRICOTは日本、シンガポール、グアム、フィリピン、台湾、インドネシアを接続する1200kmに及ぶ海底ケーブルのことで、通信容量は毎秒190テラビット(テラ=1兆)以上で、2024年にサービスを開始する予定です。既にご存知の方はいらっしゃるかもしれませんが、この敷設にはGoogleとFacebookが参加することを表明しています。両社は投資金額を明らかにしていませんが、PLDTは投資額をはっきりと伝えています。その額はなんと8千万ドルです。
PLDT invests US$80M in APRICOT cable system, drawing global hyperscalers
Announcing Apricot: a new subsea cable connecting Singapore to Japan
Apricot subsea cable will boost internet capacity, speeds in the Asia-Pacific region
APRICOTの敷設でルゾン島とミンダナオ島に新しいケーブル陸揚げ局が建設されます。これによってフィリピン国内のネットワーク障害が軽減されます。またAPRICOTはフィリピンの東側を通るルートを採用しているので、通信経路の多様性が生まれます。簡単に言えば名神高速道路と新名神高速道路のような関係性が構築されます。今まで日本からオーストラリアのサーバーにアクセスするにはフィリピンの西側を回り込んでインドネシアなどを経由するという経路でしたが、インドネシアを経由せずにフィリピンからオーストラリアに直接アクセスできるのでトラフィックが分散されます。分かりやすいように例えの話ですからこの通りではありませんが、このような多様性が生まれることで混雑を避けられるというわけです。これまで以上にオンライン英会話などが捗るかもしれませんね。
PLDTにとって今回のAPRICOTは18本目の国際ケーブルシステムへの参加となり、フィリピンと世界とをつなぐ大きな架け橋としてのプレゼンスを確固たるものにするでしょう。
またPLDTは国内ファイバーネットワークの強化も同時に発表しており、ライバルのConverge ICTに遅れを取ることはないでしょう。PLDTの強みは物理ネットワークだけではなく5Gなどの無線ネットワークも有している点にあり、DITOやConverge ICTのような強力な新興電気通信事業者が現れたとしても、PLDTが前線を退くようなことはないと思います。